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プラトニックラブ コレクションは4作からなる短編小説集。巻頭が「図書館のアリスさん」です。
著者のプロフィール
武岡瑞樹
1994/4/21生まれ 28歳 三重県出身
図書館のアリスさん
あらすじ
私立の図書館に勤務することになった竹崎悠馬が主人公です。無表情で黙々と仕事をする有栖川春香さんが悠馬の指導をすることになります。彼女はアリスと呼ばれています。悠馬はアリスの心を開こうと、いろいろ試みますが、彼女はビジネスライクな接し方を変えようとはしません。悠馬もアリスの心をこじ開けようとはせず、不器用だが、まじめに仕事に取り組んでいきます。仕事に慣れるにつれ、アリスにも苦手な分野があることに、悠馬は気付きます。少しずつ悠馬はアリスを励ましていきます。ある日、アリスを罵倒するクレイマーの男が現れます。悠馬が助けに行くと、男は立ち去ります。その後も男は悠馬や他の男性職員がいないタイミングを見計らってアリスを攻撃します。そこで悠馬はある計略を思い付きます。
画像引用:illustACより https://x.gd/8mLMI
コメント
素朴な設定とプロットで、現実にありそうなお話です。奇想天外な出だしや現実に有り得ない話も悪くないですが、このようなどこにでもありそうな話は、やはり安心して読めます。不器用なふたりが出会ってから好意を確かめ合うまでを4つの章に分けて組み立てています。
あとがきや解説がありませんので、わたしの憶測ですが、悠馬は作者の分身のような気がします。主人公である悠馬の淡い好意がなかなか実を結ばないのですが、少しずつアリスの心が解きほぐされている様子が、上手に表現されています。彼女が弱気を見せて、固くなっているところで、調子に乗らず淡々と二人でひとつのことを成し遂げます。最後の場面でも、作者はすぐにハッピーエンドにしません。アリスは無表情で機械的に返答していますが、そのあとようやく読者の期待に応えます。読んでいるわたしは不器用でまじめな悠馬が「やったー!」と跳びあがってもおかしくないと思いましたが、抑えた表現での結末は見事でした。
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